谷川岳――2008.7.23(水)


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◆朝日カルチャーセンター千葉・軽登山実技講座……第4水曜日
◆谷川岳
たにがわだけ(オキノ耳)……1,977m
登り27p→稜線9p→下り10p→林道下り27p……73ポイント
日の出0443、日の入り1857……7.23に前橋で
◆上越新幹線・上毛高原駅から……2008.7.23(水)実施


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●計画がこれほどみごとに無視された例も少ない。みなさん大喜びの結果となったが。
●その1……天神峠までは観光客気分で行きたかったのだが、みなさん展望台に上がらずにリフト駅わきで通常の休憩に。観光リフトの片道400円がむだになった感じ。登った分、得したというルートでもない。
●1105天神峠(標高約1,500m。観光リフト終点)を出発→1125天神平(ロープウェイ駅)からの道と合流(標高約1,400m)→1150-1200熊穴沢ノ頭避難小屋(標高約1,500m)→1235-45天狗の溜り場(標高約1,650m)で休憩→1325-35谷川岳肩の小屋(標高約1,900m)でトイレ休憩→山頂オキノ耳(標高1,977m)直前で驟雨。なんとか雨具をつけて急いで肩の小屋に戻る→1410-40肩の小屋でコーヒーを飲んで休憩。
●その2……肩の小屋からトマの耳に登ったあたりでポツポツと雨がきたが、雷鳴は一度も聞かず、雲のようすも特段の変化を感じなかったのでそのまま最高峰のオキノ耳に向かった。山頂直前というところで大粒の雨が降り始めた。雹が溶けたような雨粒なので、上空に大きな雲があるという印象。あいかわらず雷鳴は聞こえないのでわからないが、小さな雨雲が流れていくという程度のものではない感じがした。直ちに雨具をつける。私は現在実験中のものとして半ズボンにした雨具のズボン+カサというシンプルな構え。
●その3……とりあえず天気待ち休憩として30分をとった。これによって西黒尾根〜巌剛新道の下山は中止。岩が濡れたというより、時間に余裕がなくなったので危機管理的に無理になるという判断。400円のコーヒーはうまかった。参加者のひとりNさんは小屋に泊まって明日、平標山、明後日、三国峠〜猿ヶ京温泉へ向かうという。
●1440肩の小屋(標高約1,900m)を出発→1550-1600-05熊穴沢ノ頭避難小屋(標高約1,500m)で休憩→1645ロープウェイ天神平駅(標高約1,300m)
●その4……下山は登ってきた天神尾根を下ることにした。小屋を出るときにはもう雨は上がっていたが、下り始めるとすぐに雨が降り始め、それが猛烈な雨になった。道はたちまち川になり、驟雨の体験としては素晴らしいものになった。予定では西黒尾根のクサリ場をダブルストックで下るつもりだったので、登りでその準備をしてきたつもり。みなさん、ダブルストックで余裕の下山。技術的な不安を感じる人はほとんどいなかった。この驟雨では西黒尾根の岩稜も完全に濡れていて、難易度が上がっていたにちがいない。
●その5……下山中に不安な要素があった。遠いけれど雷鳴があった。進行方向右手もあれば左手も。全然近づいてくる気配はないので、みなさんに雷鳴段階から稲光段階への移行段階の観察法などを講義したけれど、不安は樹林帯まで下らないうちに、頭の上で突如雷が鳴ったらどうしようという不安は大きかった。雷雲が時速20〜40kmで走ってくるのならいいのだが、大きな雷雲がすでに頭上にあって、雲底が高いのであまり圧迫感を感じていないだけだったら、危険度は大きい。夏に稜線上で雷に遭うのがもっとも危険という大原則からして、いやな時間が進行していった。
●その6……熊穴沢ノ頭避難小屋で休憩したら、もうあたりは樹林帯。落雷を避ける条件は得たので次のステップを考え始めた。1605に避難小屋を出たので、天神平から約10分で土合へ下って乗れる可能性のあるバスは1657谷川岳ロープウェイ→1720水上駅という最終バス。つまり1640ぐらいまでに天神平に着ければ可能という計算。そこで早い人を前に出して、バスに乗れる人は乗って、ホテル聚楽で入浴というスピードレースに切り替えた。最後の一団が天神平に着いたのは1645。前の人たちがバスをなんだかんだと止めていてくれればまだ可能性がある……と思っていたら、先頭集団がロープウェイ駅で大きな×印をつくっていた。ロープウェイが動かないという。「え? 運行が終わっていた?」と思ったら、そうではなくて止まっているという。足止めを食っているという。
●その7……雨具を脱ぎ、トイレに行き、全員がようやく下山態勢になったころ、「レストランへどうぞ」と指示された。ロープウェイは1400ごろに雷で止まって、そのまま動いていないという。けっこうたくさんの人たちがもうすでに2時間以上待たされているという。
●その8……ともかくいつ動くかわからないというので、レストランに下りていくと、ドリンクメニューはどうぞなんでもご注文くださいという大盤振る舞い。Sさんなどは遠慮してホットコーヒーを頼んだが、生ビールもいいとわかって、生ビールも。「ケーキセットは終わりました」というアナウンスでガッカリしたりしているうちに、生ビールに枝豆セットというのもありということがわかって枝豆だけ全員分もらいに行く人も出た。枝豆は最後には「もうこれだけです、ご自由に」と大きなボウルがドンと出た。
●その9……そのうちにそば・うどんもあるということがわかって、レストラン内は軽食タイムに。私たちも全員分頼んだ。キノコがふんだんに入っていてケチった感じがない。ソフトクリームやら、なんとかサワーやら、とにかく徹底的な乗客サービスで「こんなにしてくれていいの?」という気分が多かれ少なかれ全員にあり、人によっては「サービス業の基本だよな」という感想も。全従業員が「善意のサービス」に徹していることがはっきりと表現されていた。
●その10……じつは肩の小屋のオヤジさんは下のほうで雷鳴が聞こえていたことから、ロープウェイが止まったことは予測していた。最後にわかったのだが、谷川岳のロープウェイは雷で止まることはけっこうあるという。ごぞんじのように雷雲は高速で移動していくので、しばらく経てば運転を再開できた。ところが今回は結局約4時間止まって、しかもなお、運転再開できる状態にはならなかった。「こんなことは勤めて20年になりますが、はじめてです」とのこと。レストランでそば・うどんも食べ終わり、食後のコーヒーも終わったころ、ゴンドラが1台、ゆっくりと下っていった。「下まで行けたら、再開かなあ」などといって、運転再開間近という気配がただよってきた。「従業員も下ろさなくてはならないから、心配しなくていい」とは考えつつも、上毛高原駅から東京方面への新幹線の最終が2144なので、それも視野に入れないといけないという時間帯になってきた。従業員がまわってきてロープウェイ駅についてからの乗客の予定をリストアップし始めた。私たちは上毛高原から新幹線で今日中に東京に帰ると伝えたが、バスを用意してくれるという。「じゃあ、千葉までお願いしたい」などと口走る人もいたが、バスが用意されるなら、下の駅を2030ごろまでに出られれば東京着2304が確保できる。千葉駅から先のみなさんには午前様が出るにしても。
●その11……「そろそろかなあ」などといっているころ、Sさんがひとりで乗り場に先行した。「そろそろ動くだろうから」と言い残して。その現場がどうだったかつまびらかになっていないが、再開第1号のゴンドラに乗る約束をとりつけて「周囲に気づかれないように、三々五々乗り場に来るように」という指示がきた。風呂は遅いが交通関係にはなかなか鋭い目配りのSさんのおかげで、小さいこどもたちより前に、私たちは全員先頭のゴンドラに乗ることができた。
●その12……ゴンドラが出発したのは1850。テスト運行で下っていったゴンドラはずいぶんゆっくりだったが、じつはゴンドラはそのスピードで下っていった。標準速度が毎秒1m(時速3.6km)で減速状態で毎秒50cm(時速1.8km)だという。通常10分のところ私たちは1935まで45分かかったが、途中で減速と停止があったから。標準速度で40分というスピードだ。レストランで待っていたときにも大きな雷鳴があったが、ゴンドラが下りはじめてからも雷鳴があった。つまり雷雲がまだ頭上で動かない。ロープウェイの電源を入れると、ワイヤーに落雷する危険が大きく、設備が破壊されるリスクを負うので、今回はどうしようもなく、最終手段として、ジーゼルエンジンで直接ワイヤーを動かしているのだそうだ。上の駅でゴンドラをメーンケーブルに送り出すために、4〜5人でゴンドラを押してくれたけれど、下の駅でも人力でゴンドラをプラットホームに引き込むという。私たちはそういう特別な運転状況に巡り会わすことができたのだ。
●その13……ゴンドラの中には45分いたけれど、飽きなかった。途中で一瞬ガスが切れて谷川岳の双耳峰が見えた。従業員が2人同乗していたので、みなさんつぎつぎに質問しながら、なごやか、かつ特別な時間を共有していた。下の駅が近づくまでルームライトを点灯しなかったが、それも暮れなずむ周囲の雰囲気を壊さないよう従業員の人が気を利かせてくれていた。
●その14……下の駅で、私たちは強引に、片道切符を払い戻されてしまった。詳しくいおう。ゴンドラの客のほとんどは往復切符で乗車している。その人たちの切符を全額払い戻すというのは(払い戻さないという考え方もありうると思うけれど)常識的に理解できる。私たちはどうだったのか。片道切符で天神平へと上がって、下山は西黒尾根のつもりだった。その予定を変更して天神平に下ってきた。帰りの切符を買う機会もないままに、飲み物や食べ物をいただいて待っていた。そうしたら上りの片道切符も払い戻してくれるというのだ。それは筋がちがうでしょう、と全員(たぶん)が思い、そういう意見を述べたけれど、受け合ってくれない。いわば強制的に払い戻させられて、おまけに「おふたりさま往復」という優待券をいただいて、選り取り見取りのペットボトル飲料をいただいて、大型バスに案内された。トラブルがあったときには徹底的にサービスするという考え方がそこにもあったように思われる。条件によって取捨選択するリスクより、例外もぜんぶ同一条件にしたほうがいいというリスク管理にちがいない。「トラブルに巻き込まれたお客さんにはすべて払い戻しして、提供できるものはすべて提供する」というシンプルな基本方針が徹底されていたように思われる。従業員のみなさんに、いやな顔や困った顔は一度も見なかった。みなさん、徹底的に「善意のサービス」に徹していた。
●快適なドライブで1945ロープウェイ駅→2030上毛高原駅と走って、最終の1本手前の2042上毛高原→2200東京という列車に乗れた。
●その15……食事はそば・うどんでいちおうすんだとして、風呂はなかった。けれども天神平駅はスキー施設なので、洗面所にお湯が出て、更衣室があった。そこでみなさんからだを拭いて着替えたので、すでにどうにもならない状態ではなくなっていた。からださっぱり、気持ちホンワカとして、ロープウェイのトラブルに感謝する人のほうが多かった。


◆集合
●7.23(土)……JR東京駅_中央線快速ホーム_前方2両目乗車口に集結

◆ポイント
●ロープウェイを利用して谷川岳に登ります。
●それだけではもったいないので、西黒尾根の岩稜を下ります。ラクダのコルからは展望のいい巌剛(がんごう)新道を下ります。
●西黒尾根の下りは、雨の時には避けたいので、そのときにはロープウェイ下の田尻尾根を下るかもしれません。(ロープウェイで下る場合もありえます)

◆往路
0804東京始発(上越新幹線_Maxたにがわ403号_越後湯沢行き)……0923上毛高原
(0804東京→0810上野_0830大宮_0923上毛高原)
0928上毛高原駅始発(水上駅行きバス)……0951水上駅(600円)
0955水上駅始発……1015谷川岳ロープウエイ(650円)
谷川岳ロープウェイ_谷川土合口……谷川天神平(片道7分、1,200円)
峠観光リフト……天神峠(片道7分、400円)

◆現地行動
1100ごろ_天神峠を出発……登り20ポイントを2時間半として
1330ごろ_オキノの耳……下り12ポイントを1時間半として
1500ごろ_ラクダのコル(巌剛新道分岐)……下り15ポイントを2時間として
1700ごろ_マチガ沢展望地点……車道下り4ポイントを30分として
1730ごろ_谷川岳ロープウェイバス停
*バス(谷川岳ロープウェイ→水上駅_650円)1625→1648、1657→1720
*バス(水上駅→上毛高原駅_600円)1735→1800、1835→1900
*タクシー_ロープウェイ駅→水上駅(1台約4,500円)、水上駅→上毛高原駅(1台約4,500円)
*できれば水上で入浴、食事をしたいところですが、時間を見ながら考えましょう。

◆帰路参考
●上越新幹線(上毛高原→東京_*印はたにがわ)
1819→1940*、1842→2000、1922→2040*、1942→2100、2042→2200*、2144→2304*

◆費用の目安
JR_東京→上毛高原……2,520円
新幹線自由席_東京→上毛高原……2,720円
bus_上毛高原駅→水上駅……600円
bus_水上駅→谷川岳ロープウェイ……650円
ロープウェイ……片道1,200円
峠観光リフト……片道400円
bus_谷川岳ロープウェイ→ 水上駅……650円
*taxi_谷川岳ロープウェイ→ 水上駅(1台約4,500円)
bus_水上駅→上毛高原駅……600円
*taxi_水上駅→上毛高原駅(1台約4,500円)
JR_上毛高原→東京……2,520円
新幹線自由席_上毛高原→東京……2,720円

◆電話
●タクシー(水上駅)
関越交通水上営業所……0278-72-3131

◆持ち物
●食べ物・飲み物――水筒+行動食+おやつ
★この時期、水は2リットル以上必要かと思います(肩の小屋でペットボトル購入できます)
夏季日帰り標準セット
●足まわり……運動靴、軽登山靴
●行動着……ドライタイプの登山用Tシャツ+長ズボン+長袖シャツ
●雨具……折りたたみ傘(ゴアテックスレインスーツ)
●小物……地図+健康保険証コピー+時計+ポケットライト

◆ルートシミュレーション
●地図は国土地理院1:25,000地形図、高田3号-2(しげくらだけ)、高田4号-1(みなかみ)を縮尺なりゆきで使用しています。
●シミュレーションマップ上の○印は予定したルートが太い等高線(50m)を横切る地点を中心にした半径50mの円。数字は100m単位の標高。◇印は山頂から山裾に向かって地図上で計った距離で、ごくラフな計り方で500mごとに印をつけています。
●一番簡単な見方としては○印と◇印をどちらも1個7.5分(2個で15分、8個で1時間)と概算する時間目盛り、あるいはエネルギー目盛りとしてみて下さい。
●なお、下りは道の状況によって登りの70%と見積もるのが現実的です(高速下山路では50%、難易度の高い場合は100%とすべき例もあります)が、計画段階では登り時間にしておいて、余るようならリーダー権限の予備時間として自由に使うという考え方をしています。


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